移動式木質ペレット実証プラント導入のお勧め

ヨーロッパでは自然エネルギーの利用が日本に比べてはるかに進んでいることは皆さんご存知だと思いますが、自然エネルギーのうち75%が森林エネルギー(木質のバイオマスエネルギー)によるものだということをぜひ覚えてほしいと思います。
家のストーブからビル、公共施設、大規模商業施設の暖房、地域暖房まで、ヨーロッパでは森林エネルギーが幅広く利用されています。
他の自然エネルギーとの違いは、森林エネルギーの場合には森林の整備や地元でのペレット製造といった形で新たな雇用が生み出されるということです。
オーストリア・シュタイヤマルク州森林協会が行った調査結果では、人口1万人の町で住宅4000棟、公共施設、業務施設で石油燃料及びガスボイラーを使用した場合の雇用創出が9人なのに対し、森林エネルギーによる暖房を利用した場合の雇用創出は135人に上り、その違いは15倍とされています。

日本でも昔はまきを燃料に使っていましたが、今では石炭から灯油へと中心となる燃料の形が変わりました。日本では石油は輸入に頼っていますから、お金が国内で回らずに外国に流れてしまっているのです。
もったいないことだと思いませんか。
電気を利用した空調も普及が進んでいますが、燃料はそのまま暖房に使うのが効率よく、一度電気にしてから暖房に使用するのは、ある意味で電気の無駄づかいです。

森林エネルギーにはまき、チップ、ペレットの3種がありますが、ペレットは圧縮成型のため、まき、チップと比べて1/3と体積が小さいこと、運賃が安く、屋内の保管が可能で、燃焼効率もよいといった利点があります。
そんな燃料として効率のよいペレットですから、オーストリアでは日本の約160倍、スウェーデンではなんと約200倍もの消費量があるのです。

では、どうして日本ではペレットの利用が進まなかったのでしょう。
最大の問題はペレットを製造するためのプラントのコストが高いことにありました。
大量に生産すれば当然安くペレットを提供できるのですが、日本では今まで行政からの強力なバックアップもないため、需要はなかなかすぐには増えませんでした。
したがって大量に作っても余るだけだったのです。
投資を回収できない失敗プラントが全国に多数できてしまっているというのが現状です。

遠赤外線を考慮した実際の暖房能力では、灯油の1リットル80円とペレットの1キログラム57円が釣り合います。
ただ宅急便で届けたりすると、ペレットの方がその分だけ割高になってしまうのが実情です。
まずは地産地消で、使う人が生産拠点に買いに来る環境が必要なのです。

木質ペレット推進協議会では森林整備とペレット製造を同じ地域で推進するための移動式実証プラントを開発しました。
木材を破砕し、乾燥して、ペレットを成型するまでがセットになっています。
森の中の廃校などに設置してはいかがでしょうか。
年間150tと生産能力は小さなものですが、まずここから需要の開拓をはかっていただきたいのです。
このサイズでは残念ながら赤字ですが、無駄な投資をしなくてすみます。
木質ペレット推進協議会では月100万円(プラントの運送コストと電気代または自家発電の燃料費を除く)でこの移動式プラントをレンタルしています。
その間、林業技術支援、製造加工技術支援、熱利用設備支援まで行います。
プラントのオペレーターを育て、その間に周辺での需要拡大にめどが立てば、その時はじめて年間800t以上のプラントを導入してください。
年間800tは標準家庭で約800軒分にあたります。
公共施設やビル等での利用もぜひ並行して推進してください。
そうすると採算ラインにものり、同時に年間約64haの森林整備を計画的に進められるようになるのです。

日本では今まで補助金に依存した森林組合が多く、彼らは補助金をもらった分だけの仕事しかしてきませんでした。間伐をしても、切ったままで森の中に放置されていました。
それでは補助金以上に仕事が増えていきません。
切った木材を運び、ペレットに加工して、地元で燃料として使う。そこには新しい雇用が生まれます。

私たちはこの移動式プラントを導入した地域の拠点を「森の駅」として紹介させていただくことにしました。
いずれも見学いただくことが可能です。
移動式プラントがやがて大きなプラントに成長していくこと、その過程で森林整備が大規模に進められ、日本の森が元気になっていくことに私たちは期待したいと思います。